「隣人の騒音がうるさくて眠れない…」「毎日続く騒音で精神的に参っている…」
アパートの騒音問題は、生活の質を著しく低下させる深刻な問題です。我慢の限界を超え、退去を考える方も少なくないでしょう。しかし、気になるのは退去費用。できることなら費用を抑えてスムーズに引っ越したいですよね。
この記事では、騒音アパートから賢く脱出し、退去費用を抑えるための方法を徹底解説します。騒音問題に悩む全ての方にとって、一筋の光となる情報を提供できれば幸いです。

目次
1. 騒音の記録と証拠集め:退去交渉の第一歩
騒音問題を解決し、有利に退去交渉を進めるためには、客観的な証拠が不可欠です。感情的な訴えだけでは、大家さんや管理会社に真剣に取り合ってもらえない可能性があります。以下のような方法で、騒音の記録と証拠を集めましょう。
- 騒音レベルの測定: スマートフォンアプリなどで騒音レベル(dB)を測定し、時間帯、頻度、音の種類などを記録します。
- 具体的な騒音レベルの例:
- 20dB: 木の葉の擦れる音、時計の秒針(非常に静か)
- 40dB: 図書館、静かな住宅地の昼(静か)
- 60dB: 普通の会話、静かな乗用車(普通の音)
- 70dB: 掃除機、騒がしい街頭(ややうるさい)
- 80dB: 地下鉄の車内、電車の車内(うるさい)
- 90dB: 犬の鳴き声、騒々しい工場内(非常にうるさい)
- 100dB: 電車が通過するときのガード下(極めてうるさい)
- 具体的な騒音レベルの例:
- 録音・録画: 騒音の様子を録音・録画します。日付と時間を明確に記録し、状況が分かるように撮影しましょう。
- 日記・記録: 騒音が発生した日時、時間帯、音の種類、状況、自身の精神状態などを詳細に記録します。
- 第三者の証言: 他の入居者も騒音に悩んでいる場合は、証言をもらうのも有効です。
これらの記録は、大家さんや管理会社への苦情申し立て、交渉、さらには法的手段を検討する際にも重要な証拠となります。
ただ口頭で上の階の足音がうるさい、歌声がひどいだけ伝えられてるより、具体的に教えてもらえると対処方法の検討が進みます。
2. 大家さん・管理会社への適切な対応:段階的なアプローチ
証拠を集めたら、まずは大家さんや管理会社に相談しましょう。いきなり退去を申し出るのではなく、段階的なアプローチで問題解決を目指すことが、退去費用を抑える鍵となります。
- 口頭での相談: まずは電話や直接訪問で、騒音の状況を伝え、改善を求めます。
- 書面での苦情申し立て: 口頭で伝えても改善が見られない場合は、内容証明郵便などで書面で苦情を申し立てます。証拠資料を添付すると効果的です。
- 内容証明郵便のポイント:
- 騒音の具体的な状況、頻度、時間帯などを明記する。
- 改善を求める具体的な内容(例:加害者への注意喚起、防音対策など)を記載する。
- 改善が見られない場合は退去を検討せざるを得ない旨を伝える。
これらの対応を記録に残しておくことも重要です。

3. 大家さん・管理会社の対応例
大家さんや管理を任されている管理会社は主に以下の対応をします。
- 周辺居住者への聞き取り:まわりの居住者の方へ同様の申し出がないかヒアリングをします。
- 建物全体への周知:事実確認ができた場合、原因となっている行動について注意を促す書面を投函や掲示板へ張り付け周知します。
- 原因者への要望:明らかな迷惑行為として行っていた場合を除き、生活上発生している音が原因となっている場合は、あくまでも配慮いただきたいという要望をすることとなります。
- 原因となりうる行動へのアドバイス:原因が特定できた場合は、そちらを解消するためのアイデアなどのアドバイスを行います。
- 申し出者・原因者での面談の場を設置:こじれることが多いためあまりありませんが、双方の必要に応じて話し合いの場を整えることもあります。
こちらで案内した内容はあくまでも悪意を持って音を発生させているなどの場合を除く、各々の中では普通に過ごしていたという意識であった場合の対応方法になります。
危害を加える意図で、床を叩き続ける、下手をすれば玄関扉を蹴り続けるなどの話であれば、管理会社だけでなく、警察への相談も検討ください。大家さんや管理会社からの通報では、警察は出動してもらえないですが、居住者間トラブルという通報であれば対応してもらえます。管理会社から申し出者へ通報を依頼するということもあるようです。
以下の今後の交渉において、警察が繰り返し出動するレベルの騒音であった事実を積み重ねることも重要なポイントとなります。
日本の法律は居住者を保護することに重点が置かれているため、管理会社に出来ることが正直少ないのが現状です。
4. 退去交渉:費用を抑えるためのポイント
大家さんや管理会社との交渉で、退去が避けられない状況になった場合、以下の点を意識することで退去費用を抑えることが可能です。
- 契約書の確認: 契約書に退去に関する条項が記載されているか確認します。特に、短期解約違約金や原状回復義務について確認しましょう。
- 騒音が原因であることを明確に伝える: 退去理由が騒音であることを明確に伝え、契約違反(平穏に生活する権利の侵害)であることを主張します。
- 違約金・原状回復費用の交渉: 騒音が原因である場合、違約金や原状回復費用の減額、もしくは免除を交渉します。
- 交渉の記録: 交渉の内容、日時、相手方の名前などを記録しておきましょう。
一般的に生活音が原因での申し出の場合は、大家さんや管理会社側として特別の配慮をするというのは難しいところではあります。しかし、先ほどご紹介した対応例などの実施を怠ったなどという場合は、その点を指摘いただくという形のほうが良いと思います。
5. 法的手段の検討:最終手段としての選択肢
大家さんや管理会社との交渉が難航する場合、法的手段を検討することも視野に入れる必要があります。
- 弁護士への相談: 騒音問題に詳しい弁護士に相談し、法的アドバイスを受けます。
- 調停・訴訟: 弁護士と相談の上、必要に応じて調停や訴訟を検討します。
- 過去の裁判例の引用:
- 東京地裁平成15年10月29日判決: 深夜の騒音により睡眠を妨害されたとして、慰謝料の支払いを命じた事例。この判決では、騒音の程度、時間帯、継続性などが総合的に考慮されました。
- 大阪地裁平成20年3月27日判決: 上階からの騒音により精神的苦痛を受けたとして、損害賠償請求が認められた事例。この判決では、騒音の程度が受忍限度を超えているかどうかが争点となりました。
- 過去の裁判例の引用:
- 法的手段のメリット・デメリット:
- メリット:正当な権利を主張できる。
- デメリット:時間と費用がかかる。
この段階になった場合、私の仕事上の立場では皆さんと対立することとなってしまいます。その中でこの言葉をお伝えするのはどうかということもありますが、法的手段は最終手段と考えていただくべきかと思います。
繰り返しになりますが、大家さんや管理会社の対応が十分になされず、信頼関係が破壊されたという場合は別ですが、通常生活上で発生する音に関しては、発生させる方も感じ方にも個人差があります。一方の主張で相手を退去させるということは、日本の法律では難しく、管理会社としてはご紹介した対処例といったことまでしか行えません。また、裁判ではそれらを行っていた場合、管理会社側としての対応が悪かったとみなされることも難しいです。それらを裁判で争う労力や、金銭的な負担よりも、まずは交渉による解決を目指しましょう。

6. 退去後の注意点:トラブルを避けるために
無事に退去した後も、以下の点に注意することで、後々のトラブルを避けることができます。
- 退去時の立会い: 大家さんや管理会社と立会い、部屋の状態を確認します。
- 原状回復費用の明細書: 原状回復費用が発生する場合は、明細書を受け取り、内容を確認します。
- 敷金返還: 敷金が返還される場合は、期日までに返還されているか確認します。
7. 騒音トラブルを未然に防ぐために:入居前のチェックポイント
今後のために、入居前に以下の点をチェックすることで、騒音トラブルを未然に防ぐことができます。
- 物件周辺の環境: 周辺の騒音源(交通量、商業施設など)を確認します。
- 壁の厚さ、防音性: 壁を叩いてみたり、隣室の音が聞こえないか確認します。構造についても気にされるといいと思います。こちらの記事で建物の構造について詳しく解説しています。
- 内見の時間帯: 日中だけでなく、夜間や早朝など、様々な時間帯に内見することをおすすめします。
- 他の入居者の様子: 他の入居者の生活スタイルなどを確認できる場合は確認します。ベランダや玄関先に置かれているものでどのような家族構成かなどを推測できます。個人情報保護が厳しい、内覧時に聞かれても不動産屋さんはお答えできません。
まとめ:諦めずに適切な対応を
アパートの騒音問題は、精神的にも肉体的にも大きな負担となります。しかし、適切な対応を取ることで、問題を解決し、退去費用を抑えることは可能です。
この記事で紹介した方法を参考に、諦めずに段階的な対応を心掛けてください。そして、何よりもご自身の心身の健康を第一に考えて行動しましょう。
最後に厳しい言葉を書きますが、本当の意味での騒音発生原因者というのは話し合いでその後きれいに解決するということは少ないです。賃貸で住んでいるメリットの一つでもある住み替えのしやすさという手段を早めに選択し、ストレスのある生活から脱出するというのは最も負担の少ない方法なのだろうと思うところです。
以下の記事で引っ越し費用を抑える方法をご紹介しています。一度ご確認ください。

(※上記は一般的な情報提供であり、法的アドバイスではありません。具体的な法的判断については、弁護士にご相談ください。)